"Virtual Bodies in Reality"

Margaret Tan

 

"Visible Human Project"における、「実際の」身体に加えられた「ヴァーチャルな」暴力。

1986年にアメリカで始まった、"Visible Human Project"で見ることができる、男性と女性のヴァーチャルな身体を取り上げた作品である。そこでは、犯した罪によって死刑判決をうけた男性と、科学研究のため提供された匿名の女性の肉体が整然と薄切りにされ、画像化されている。それらの画像はコンピュータのデータ・ファイルに転換され、次いで一片ずつ再構成され、2体のヴァーチャルな身体を形作っている。

本作では所定の方法により、ビジターがこれら人物をインタラクティブに閲覧することを可能にしている。

本作の意図はまず、暴力という概念の変容に光を当てることにあるが、その暴力という概念は、今ではテクノロジーによって媒介されているのである。次には、「本物の人々」のもっともらしい「ヴァーチャルな身体」を提示するという暴力を見ている人の倫理的な姿勢に、黙想的かつインタラクティヴな思索的状況を創り出すことにある。そして最後は、人体の詳細を一見匿名のワールド・ワイド・ウェブに掲載するという責任(あるいはその欠如)の概念を強調することである。(オルガ・シシュコ)